徳島家庭裁判所 昭和53年(少)828号 決定 1978年7月27日
主文
少年を特別少年院に送致する。
理由
一 罪となるべき事実
少年は、昭和五三年六月一八日午後三時ころ、徳島県麻植郡○○町○○×番地所在○○公園において、友人Aが、同人とつきあいのあるB子(当時一六歳)を少年の運転する普通乗用車に連れ込んだうえ、少年に対し車を発進させるよう告げたので、少年は、これに応じて発進させ、同日午後七時ころ、香川県大川郡○○町○○××番地所在○○○○方南方一〇五〇メートルにある○○川河川敷空地に至り、前記Aと強姦の意思を相通じて、同車内において、Aが、同女をシートの上に仰向けに押え込み、衣類をはぎパンティー等の下着を脱がしかけたところ、同女が激しく抵抗するので、少年も協力して同女を押えつけ、同女の抵抗を抑圧し、まずAが同女をしいて姦淫し、ついで少年が同女をしいて姦淫した。
二 適用すべき法令
刑法六〇条、一七七条前段。
三 特別少年院に送致する理由
少年は、
(一) 前記一のとおり、二人で強姦を行つており、少年自身は、現場で強姦の意思を生じたものとはいえ、少年の運転によつて現場に至つたうえ、同車内で抵抗を抑圧して姦淫しているもので、その行為は極めて悪質といわざるをえず、
(二) その生活史として、昭和四七年四月に中学校に入学し、出席率は良かつたものの、学習効果が上らず、生活面がルーズで実行力に欠け、自主性に欠けるため悪友に誘われやすく、判断力の弱い面がみうけられ、中学二、三年ころから喫煙を覚え、同五〇年四月に高校に入学してからは、出席状況には特に問題はなかつたものの、学習には無気力な面もみられ、世話好きではあつても、あい変らずルーズな面がみられ、高校一年のころから夜遊びや外泊があり、女遊びも覚え、同二年時には飲酒も覚えたうえ、素人娘数人と肉体交渉をもつたこともあり、また、同三年時の昭和五三年一月には友人が盗んだラーメンを食べたことで参考人として警察から調べられたこともあり、その後、同年三月に高校を卒業して間もなく普通免許を取得し、徳島市内にセールス見習として勤めはじめてから数日を経ずして本件犯行に至つたもので、その間に左腕にいれずみをするといつたこともあつてこれまでに犯罪歴はないものの、生徒としてまじめに過したとはとてもいえない生活態度であり、
(三) その家庭環境として、父は高校教師をし、スポーツマンとしても熱心に活やくしており、母は農業をしていて経済生活や形式上の教育環境は良好であるが、これが実質的な家庭教育につながつておらず、遂に本件を起すに至つたもので、保護者の養育態度にはかなり問題があるといわざるをえず、他に少年を指導するに十分な家族員は見当らず、
(四) 他に適当な社会資源は見当らず、
(五) その性格等として、知能は普通域(I・Q=94)にあるものの、抑制力の不足から生じる情緒不安定や衝動的行動傾向が目立ち、普段は明るく活動的であるが、体面を傷つけられるとすぐ怒る短気な面や弱みをカバーするための意固地な面があり、身勝手で容易に規範から逸脱しやすく、真のいみの自律性、主体性が育つておらず、合理化機制が強く、このような偏つた性格となつた原因は、成績のよい姉妹との比較において、自分は家庭で十分に認められていないという不満から学習意欲を失い、保護者も表面的に少年の指導に当つたのみで、真に少年の心情や欲求を理解していないのみか、少年の行動や友人関係もは握していない状態であり、加えて、少年にとつて父は近寄り難い存在で、その十分な同一視ができず、そのため、自分を認めてくれる仲間を求め、彼等から承認されることによつて自我を補償し、不良交友を通じて不満感情を発散させるといつた背景に存在するものと考えられ、本件非行は、このような状況のもとで発生したもので、一過性のものとはいえず、これを正すには、少年院での矯正教育が必要である。
以上のうち、(一)については、当該犯罪事実に係る各捜査報告書、各告訴調書、各実況見分調書、各供述調書、押収してある紺色スラックス一本(昭和五三年押第八二号の一)及び当裁判所の審判の結果により、(二)から(五)までについては、学校長作成の各学校照会回答書、少年鑑別所作成の鑑別結果通知書、調査官作成の少年調査票及び当裁判所の審判の結果により、いずれも認められる。
そこで、少年の保護のためには、その犯罪的傾向の進んでいる点からみて特別少年院送致もやむをえないと考えられるところ、その性格に鑑み、G三コース(知能指数七〇以上で性格の偏りが著しくない者)が最も妥当と思われる。
四 結論
よつて、少年法二四条一項三号、少年審判規則三七条一項、少年院法二条四項により、主文のとおり決定する。